一口だけ。
ほんの一口で、
棺の中から目覚める奇跡を、彼女は確かに信じていた。
収容台に置かれた、不自然なほどに艶のある林檎一個。茎には小さな緑の葉。表面には、すでに 誰かが齧った跡が一つ残っている。 美しいまま腐らない。だが見つめていると、林檎の側からも見つめ返されている感覚がある。
童話の中で、林檎は王女の意識を奪い、彼女を死に似た眠りに沈めた。 ここに収容されている林檎は、その続きを書こうとする。 眠らせる相手も、目覚めさせる王子も、もう存在しないのに。
齧った瞬間、青い葉の下から蔓が伸びてきます。
蔓は施設の廊下を這い、緑色の毒で床を覆い尽くします。
——気づけば、誰もが歩く速さの半分しか進めなくなる。
そして、棺はまだ、誰のためにも用意されていない。
抑制(Repression)作業 Lv.5が最も安定する。次点で洞察 Lv.3 以上。 本能・洞察は Lv.1〜2 で取り扱うと事故率が跳ね上がる。愛着作業は全 Lv で完全に通らない — 触れる側に何の親しみも要求しない、というこの個体の性格による。
| 作業傾向 | 適性 | Lv.1 | Lv.3 | Lv.5 |
|---|---|---|---|---|
| 本能 | 低(Lv↓で0%) | 0% | 40% | 40% |
| 洞察 | 普通(Lv3↑で安定) | 10% | 45% | 50% |
| 愛着 | 完全失敗 | 0% | 0% | 0% |
| 抑制 | 高(Lv↑で更に安定) | 20% | 55% | 60% |
カウンターは 初期値 1 / 最大 1。 Normal 結果で 50%、Bad 結果で 70% の確率で 1 減少する。 つまり Good を引かない作業を一度でも回せば、その日のうちに脱走する可能性が常に存在する。 WAW 級らしい「失敗のコストが指数的」な収容物。
脱走時、林檎本体は ランダムな廊下にテレポートし、その場から 緑の蔓を放射状に展開する。 蔓は秒単位で床面積を侵食し、踏んだ職員には 5 秒ごとに BLACK 20〜25 ダメージ。さらに移動速度が半減する。
蔓の床カバー率が一定を超えると、林檎は再びランダムな廊下にテレポートし、別の場所で同じ展開を繰り返す。 蔓は翌日まで残るため、一度暴走を許すと部署全体の動線が長期的に崩壊する。
HP は 600。BLACK 完全無効(×0)、PALE 弱点(×1.5)。PALE 高威力武器を持った後衛による遠距離鎮圧が最速ルート。
BLACK 耐性スーツを装備した抑制 Lv.5 職員。鎮圧用に PALE 武器を持った遠距離後衛、移動速度の高い前衛をセットで配置。 Lv.4 推奨 — 低 Lv 職員で挑むと、Good を引けず初日のうちに脱走する事故が多発する。
本アブノーマリティは、グリム兄弟「白雪姫」の毒林檎を起源とする。 童話における林檎は、美しさの嫉妬を媒介に他者を死に似た眠りへと送り込む装置だった。 この施設の林檎は、その目的を失ったまま、なお誰かに齧られたがっている。
カウンターが 0 になり蔓が伸び始める瞬間 — それは林檎が初めて自分以外の場所で "実"る時間でもある。 童話の構造をなぞった果実は、目覚めさせる役を引き受けてくれる王子を、もはや待っていない。